やっぱ避けては通れないと思い、遅ればせながら読んでみました。
番外編は未読ですので本編4巻までの感想です。
これが支持されるのは
頑張りたいし変わりたいし彼女欲しい。
でも、その気持ちはいつも強くあるけど全然頑張れない現状。
なんでこんなに思ってんのに、動かねーんだよ自分!
毎回頑張った奴みて後悔するのに、何で今できない?!
だって、やっぱすげー大変だもん。特に恵まれてない俺にしたら普通より倍大変だよ?
しかも誰も助けてくれないし。
って思ってる奴が世の中には沢山いるって事なんだな。
そう思うのは、私が藤くんクラスのネガティブ思想だから?
藤くんは本作の主人公で、30歳の派遣社員の草食系男子。
夢も金も目標もなくて、彼女もいたことがない。
そんな彼にある日、数人の女友達から同時に連絡が入り、モテ期へ突入します。
けして不細工ではないけど、行動力のなさと自分可愛さでここまできたこの男に
このチャンスを活かせるのか!!
というお話です。
これモテキって言っても、甘い恋だとか愛だとかを楽しむんじゃありません。
恋愛きっかけでわかる自分のダメさとか、
今まで染みついた劣等感を払拭するのがどんだけ難しいか、見せつけられる漫画です。
もちろん、この恋愛どうなるの!?って思う。先知りたい!って思う。
だけどそれ以上に、藤くんのネガティブさに共感の嵐。
自分が劣等感だらけの人は、いつも自分が最下層だと思うから
悲劇の主人公は常に自分。
そういう自分中心のネガティブ思考オンパレードの人は
隣の芝生は青く見えまくってて、自分のとこ見て涙目。
本当はみんな苦労してるんだと、頭の中では分かってるんだけど、
つってもやっぱ俺よりマシじゃね?と思ったりする。
そんな藤くんを見て、ないわー。って思う片隅で
すげー胸が痛んでるんですけど。
藤くんは、恋愛追い風にあてられて色んな人にフラフラしちゃうんですよ。
いい年して恋に恋してるみたいに。
だから途中である事に気付くんですけど、それが本当にもう見てらんない!
自分から好きになってないから
彼女に愛されてるか、愛されていないか
その為の努力が自分は出来てるかばかり気になってしまう。
そうです。
ないものばかりを数えてるのは、相手が好きなんじゃなくて
自分が一番好きだからです。
これって、たまたま恋愛というフィルターを通して見てるけど
自分が迷ってる事全てに言えることじゃないですか。
人生には2択。
やるかやらないかしかなくて、
多くの人がここで迷っていて、迷ってる最中には
自分がそんな初歩的な事で迷ってるとは思っていない。
でも大抵はやらないための理由を必死になって探してる。
だから努力できてるかなんてことを、ぐだぐだ考えてる。
あははははは。笑うしかない。
だからこそ、やっぱ藤くんには頑張ってほしくて
どっかで突き抜けて欲しくて、応援しちゃうんだなぁ。
お前今ここで頑張らないと死ぬぞ!まじで!ねぇ!ほら!なぁ!頼むよ!自分!
途中から自分に向けてる。
まぁとにかく登場人物の感情描写が細やか!
特に女の子のタイプ別の描き分けが素晴らしいです。
まさにかゆいとこに手が届くような感じ。
絵が上手いし、表現の幅があって笑える。
ネガティブだってさんざん言いましたけど、
苦しくて読めないとか、暗すぎるとかじゃないですから
結構ラクな気持ちで読んだらいいと思います。
それで、自分もちょっと頑張ろうと小指の先ほどだとしても、思えたら素敵です。
■漫画感想文一覧
残酷な神が支配する/賢い犬リリエンタール/ピアノの森/テルマエ・ロマエ/ SEX/ よつばと /
地雷震-ディアブロ-/ミツバチのキス/ 溺れるナイフ/ 星守る犬 /GENGO/あずみ/ BECK /
ベルサイユのばら/ ボーイズ・オン・ザ・ラン /花より男子/ おおきく振りかぶって /
私がいてもいなくても
心はすれ違い続け、愛は伝わらない。
これは人間の心という、不確かで曖昧で流動的なものを17巻かけて描いた傑作。
半端ない作品。すごすぎてうまくお伝えできるか不安。
ていうか、私がちゃんとこの話しを理解してるか不安。
読み終わった後は、草原にいって大の字で寝ころんで星を見てしまうような気分。
そんで静かに泣いてしまうような気分。
愛とはなんなのかっていう究極を考えずにはいられない。
主人公のジェルミは母の再婚相手のグレッグに、性的虐待を受け心が崩壊していきます。
そして、ある日事故に見せかけてグレッグを殺してしまう。
それを知った義兄のイアンはジェルミを責めるが、ジェルミの告白によって父・グレッグが
義弟にしてきたことを知り、崩壊したジェルミを愛によって救おうとする物語です。
ジェルミは、大きな傷によって心と体を繋げる回線が切れてしまっています。
だから言葉と行動がうまく繋がらなくて、周りを混乱させる。
大きなショックを受けると心は、いくらでも単体で切り離す事ができる。
そして切り離した心は、なかなか繋ぐ事ができないとこの漫画には描いてある。
14巻にこの作品を象徴する言葉が書かれています。
『どんな理由づけよりも感情は強い そして感情は紆余曲折する』
まさに、人間の心とはこういうことだと言わんばかりの一文。
だから矛盾は際限なく起こり、その理由を探し続ける。
みんな理由づけしたいんですよ。感情と行動を矛盾なく繋げたい。
でも理屈を越える感情が、時々襲ってくる限りそれを一番に感じてしまうのが性です。
その結果、自分が思わぬところに着地しちゃう事なんてザラにあるわけで、
皆そうなんだから、そんなの他の誰かにわかるわけないんですよ。
他人をわかろうとすると、この矛盾とずっと戦い続けないといけない。
人なんてわかんないんだって、しょうがないんだって、と思いながら
それでも愛してるぞって思えたら、それが一番最高。
だけど、その器は若いイアンにはまだないんですよ。
だから二人はぶつかり続けていきます。
ただでさえ、感情と行動を繋げる事のできない矛盾だらけのジェルミと
その矛盾を理解できず、自分の感情をコントロールできないイアン。
唯一の救いはお互いを好きだと思う気持ちだけは共通してるという事。
でもそれ、全然救いじゃないんですよ!
愛の捉え方が全然違うと、もう好きだって気持ちは共通項じゃなくなると思った。
例えば「愛してるから一緒にいたい」と「愛してるから一緒にいたくない」
は同じ愛なのに、絶対交わることのない愛で、
愛の定義が違えば、それはもう愛として認識できないんだなぁ…
愛なんて曖昧なものの価値観は、それぞれ違って当たり前だけど、
それでも世の中の人が仲良くやってんのは、遠からずみんな愛の定義が似てるからなんだと思う。
ジェルミのように、
愛は人を傷つけるもの。セックスは罰。だから自分にはできない。欲しくもない。
と思ってる人とどうやって愛し合うのか。もう誰もわかりません。
それでも、自分の罪を知っていて傍にいてくれる人の存在は大きい。
それが好きな人であるなら尚更。
壊滅的な関係に見えて、イアンがいなかったらジェルミは死んでたと思う。まじで。
この辺は多分理屈じゃないなぁ。
ジェルミの切れた回線を必死に繋ごうとするイアンは、救いようのないように見えるけど
人の心が変わり続けるなら、絶対の絶望もそこにはないと思う。
読み終わった後は、すげー絶望すんだろうなと思ってたんですけど、違ったんですよね。
退廃美特有の心地よさもあったけど、そういうのがよかったんじゃなくて、
傷つき疲れた二人が、急に幸せになれるわけはないんですけど
変わらない事と、変わっていく事が良くも悪くもあって、
それがいいように作用することもあるんだろうと何か感じる事が出来たんですよね。
生きるってそういう事だと思うので。
こんだけ個性が強い作家なのに、作品の中にはエゴをまったく感じない。
キャラクターの気持ちだけがそこにある。だから繰り返すし、うまくいかない。
それを作品として昇華させるのはすごいテクニックです。
人の心の仕組みをわかっているとしか思えない。
神か!
この作品、興味深すぎる。
人間に興味あるなら読む事をお薦めします。
この完成度は普通じゃない。もう、流石としか言えないよ。萩尾先生。
■漫画感想文一覧
賢い犬リリエンタール/ピアノの森/テルマエ・ロマエ/ SEX/ よつばと /地雷震-ディアブロ-/
ミツバチのキス/ 溺れるナイフ/ 星守る犬 /GENGO/あずみ/ BECK /ベルサイユのばら/
ボーイズ・オン・ザ・ラン /花より男子/ おおきく振りかぶって /私がいてもいなくても
リリエンタールは賢い犬!
すなわち賢い犬である。
大好き。大大大好き。この漫画。
WJで読み切り読んで、電撃が走りまして、衝動的に切り取って保存しました。
その後連載になった時には、本当嬉しかったなぁ。
連載は単行本4巻分で終了したんですけど、本当に惜しみました。
もっと読みたかった!もっとリリエンタール見たかった!
ジャンプにアンケート出したの生まれて初めてでした。
二足歩行で歩く、しゃべる犬のリリエンタールが巻き起こす
ファンタジーアクション?そんな感じのお話。
リリエンタールは人の思考を具現化する能力を持っていて
それを狙う悪の組織と戦いながら、家族の絆を描いています。
何が見所かって、そんなのリリエンタールの可愛さです。
礼儀正しくて、頑張り屋。そして単純。
引き取られた日野家で兄とてつこの弟として生活してる。
自分は犬だから、てつこにはなかなか弟と認めてもらえない。
それを頑張って、認めてもらえるように四苦八苦してます。
てつこに気を使ったりする姿がなんとも愛しい!
リリエンタールは、その珍しさ故に研究所に監禁状態で一人ぼっちでいた過去があります。
冷たい床で泣きながら寝てる。そんなの見たら泣くっつーの。
本当はリリエンタールのバックグラウンドをもっと読みたかったです。
そこまで連載が至らなかったのは本当残念。泣きそう。
いたいけな動物が、家族の為に勇気を出して頑張る。
はじめてのおつかい並に泣いてしまうでしょう。
正直読み切りの話のほうが泣けるは泣ける。
でも、ご安心を。読み切りは単行本3巻に収録されています。
この漫画は、悪の組織との戦いはありますが、基本的に本当の悪人は出てきません。
それがこの漫画のもう一つの魅力です。
何があっても利益を優先する冷徹さよりも、人間味溢れる行動を優先してしまう人々。
だからこそ魅力的な組織。私もこの組織なら入りたい。
もちろんエリート組に入って、シュバインさんの下で働かせてもらいたい。
最終学歴が専門学校卒でもいいでしょうか。
この作者の味なんでしょうけど、かっこいい大人を描くのがうまいです。
この連載の前にも、WJで別の読み切りを描いていたけど、それも悪役の人が素敵だった。
何考えてるかわからないキャラっているじゃないですか、淡々としててフラットな感じの。
でもそういう人って、言葉少なくてリアリストだけど、冷たいわけじゃないじゃないですか。
主人公ではないけど、重要なキャラなことが多いタイプ。
そういうキャラを描かせたら最高だと思う。
作者自身が、すごい冷静な人みたいな気がします。
この淡々としてる作風は味だと思うんだけど、少年誌だと少し刺激が足りないのかなぁ。
はっきり言って、私この作者の事すごいツボです。
手塚賞で準入選を獲ったROOM303を読んだ時に、「あ。これきた」って思った。
この感覚好きと思った。だから、これからも期待して応援していきたい。
作家買いはほとんどしない私ですが、葦原さんのは買ってしまうだろうなぁ。
リリエンタールは終わっちゃったけど、本音を言えばまた何処かで会いたい。
無理を承知でまた読みたい。4コマでいい。下書きでもいい。ラフでいい。
それくらい好きだから。
4巻は書き下ろしで、本編のその後が見ることができます。
結構ボリュームがあるので、ファンにとっちゃすごいサービスです。
紳士組は相変わらず、いいところで決めてくるわ、リリエンタールは可愛いわで最高。
てつこファンには必見の書き下ろし是非お読み下さい!
次回作も楽しみにしているけど
次回作の主人公の携帯のストラップにリリエンタールがついてるとかいう
小粋なサービスがあったらいいなぁ。
また一つ愛すべきキャラクターに出会えてよかった!
リリエンタール大好きです!
ピアノの森/テルマエ・ロマエ/ SEX/ よつばと /地雷震-ディアブロ-/ミツバチのキス/
溺れるナイフ/ 星守る犬 /GENGO/あずみ/ BECK /ベルサイユのばら/
ボーイズ・オン・ザ・ラン /花より男子/ おおきく振りかぶって /私がいてもいなくても
←押してくれたら明日もまた頑張れそうです!
読んだ漫画のレビューを書いてます。
かと思えば、
自分と世の中の微妙なズレを
嘆いてみたり、
恋に思いを馳せたりしています。
無駄に湧き上がる言葉達よ。
記事が長いのは本当申し訳ない。
暇な仕事中とかにちょろっと
見れるようなブログ目指してます。
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S | M | T | W | T | F | S |
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うまくできるかどうかは別ですが。
だから何でも言葉にしてしまいます。
そんな自分に時々疲れます。
私の人生は漫画に彩られ
妄想に支配されている。